目9
- 2021/02/22
- 21:57
Nさんは自然溢れる里山の中をゆったりと歩きます。何か目にとまったモノがあると、その都度歩を止め、デジタルカメラで撮影します。それは朽ちて風雨に晒されて苔むした大木や、小さなキノコであったり、芽吹いたばかりの若葉であったり、あるいは穏やかに流れる川のよどみや、そこに潜む魚たち。鳥などの小動物など多様なモノでした。Nさんはまるで自然そのものを愛おしむように目を細め、川を流れてゆく落ち葉を眺めながら、こん...
目8
- 2021/02/08
- 22:05
私達をご馳走が待っていました。といっても、華美な料理ではありません。Nさんが手ずから育てた家庭菜園の農作物や、採取して保存していた山菜類。近くを流れる川で釣ってきた新鮮な川魚など。それらの食材を炊き込みご飯や味噌田楽。焼き魚、鍋物など、田舎風に素朴な味付けをしたものばかりです。それらの料理はNさんが焼いた無骨な陶器の大皿に山と盛られ、ドンとばかりに炉端に置かれています。その食欲をそそることと言った...
目7
- 2021/02/01
- 21:54
うっそうとした山間部を抜けると、見上げるような高さの石垣が姿を現しました。そして石垣を分け入るように続いている小さなコンクリートの道が続いています。その道の先にひっそりと佇む古民家、それがNさんの住み処でした。私は石垣の側で車を止め、Nさんに電話を掛けました。これから伺うと連絡をしておこうと思ったのです。幾度か呼び出し音が鳴りました。しかしNさんは電話に出ません。留守にしているのでしょうか。と、古民...