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目4

私は呆気にとられました。好々爺で抜群に人当たりの良いNさんと、どちらかといえば無愛想で話すのが苦手な私。何からなにまで正反対で、とても似ている部分があるようには思えなかったのです。困惑している私を見て、Yは言葉を続けました。「…目が似ています」と。”目”?以前Yは私に言いました。寂しそうな目をしている、と。そう言われた時、私は必死に心の奥底に隠していた秘密、傷つきやすく繊細な幼い自分の姿を見透かされたよ...

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目3

私はしばらく返事を返しませんでした。というのも、Yはこの誘いに悩んでいる様子だったのです。焼き物に関しては非常に興味がある。けれど、Nさんとの関係性を考えると、いつまでもこのまま芸術友達という関係で甘え続けていることは出来ない、という点がネックとなっていたのです。一方で私の方はと言うと…。正直に言うならば、Nさんに対して油断のならない人物という印象を持っていました。確かにNさんは一見すると好々爺のよう...

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目2

二度目にNさんとお会いしたとき、-これもある陶芸作家の作品展をNさんの誘いで訪れた時でした。Nさんは手土産代わりと言いながら、私とYの分、一組のお皿ととっくり、箸置きを手渡してくれたのです。どれも無骨で、それでいて土の温もりの感じられる作品でした。Nさんはやや照れながら、「不格好でお恥ずかしいです」と言い、私とYは思わず微笑んでしまいました。殊更焼き物のお土産を喜んだのはYでした。私とY、共に芸術好きとい...

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私達は一頻り美術の話を楽しみました。ややあって、話が一段落した時、私は頃合いを見計らい昨日の話題を切り出しました。Yがぼんやりとしていた理由、そして異様な興奮をしていた理由がずっと気にかかっていたのです。私が話を切り出すと、Yは少し困ったような顔をしました。そして少し無言で考えた後で、おずおずとこう言ったのです。「目、です」と。「目?」予想外の応えが返ってきたことで私は困惑しました。一体何に対する目...

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