私はしばらく返事を返しませんでした。
というのも、Yはこの誘いに悩んでいる様子だったのです。
焼き物に関しては非常に興味がある。けれど、Nさんとの関係性を
考えると、いつまでもこのまま芸術友達という関係で甘え続けている
ことは出来ない、という点がネックとなっていたのです。
一方で私の方はと言うと…。
正直に言うならば、Nさんに対して油断のならない人物という
印象を持っていました。確かにNさんは一見すると好々爺のような
男性です。話題も豊富で人を飽きさせません。それ自体は素晴らしいこと
なのですが。反面で、どこか底知れない何か。思惑を心の内に秘めている
ように感じられてならなかったのです。
そして、Nさんから次のメールが届きました。
「私達の関係について、お見せしたいモノもあります」と。
Nさんは、「直接性的な関係を持つことはない
と約束します。その点は安心して遊びに来てください」
と続けてメールを終えていました。
…これは、Nさん流の人心掌握術でした。
時には強引に迫り、あるいは自然に心の内に入ってくる。
それも極々自然にそれが出来る。それがNさんの調教の要とも
言うべき能力のひとつでもあるのです。
…無論、この時は解らなかったのですが。
私とYは話し合いました。
互いのNさんに対する印象を率直にぶつけあったのです。
私はどこか信用出来ない部分があると感じているを正直に
打ち明けました。何か、心に秘めているように感じ入る、と。
Yはというと、確かに好々爺という印象はあります、と答えました。
…そして、彼女は実に意外なことを言ったのです。
私とNさんが似ているように感じる、と。