共有妻Y

私は呆気にとられました。
好々爺で抜群に人当たりの良いNさんと、どちらかといえば
無愛想で話すのが苦手な私。何からなにまで正反対で、とても
似ている部分があるようには思えなかったのです。

困惑している私を見て、Yは言葉を続けました。
「…目が似ています」と。

”目”？
以前Yは私に言いました。
寂しそうな目をしている、と。

そう言われた時、私は必死に心の奥底に隠していた秘密、
傷つきやすく繊細な幼い自分の姿を見透かされたようで、
Yに対して恐怖心にも似た畏れを抱きました。

誰にも見せたことのない弱みをさらけ出す怖さ。
その弱さを乗り越えたからこそ、Yは、その繊細な感受性で、
私を包み込んでくれました。だからこそ、今の関係があるのです。

まさか、今になってそのことを指摘されるとは。
それも、Nさんと似ていると言われるとは思ってもいなかったのです。

真意を受け取りかねました。
私は恐る恐る、以前Yが私に言った時のことか？と尋ねました。

Yは少し考えた末に、
「今は上手く言葉に出来ません」と首を振りました。
私はそれ以上追求することを、この時点では諦めました。