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Yが共有妻になった日6

話は熱海旅行の続きに戻ります。

次なる衝撃が私を襲ったのは、
ホテルにチェックインしたときの出来事でした。

その日、私達が宿泊するのは特別フロアでした。
昼前にホテルに到着した私達はポーターに荷物を手渡し、
上層階の特別フロア受付に案内されました。

そこでチェックインの手続きを行いました。
ゲストカードにはNさんがまず、N.N(Nさんの名字と名前)と記入しました。
そしてYにも記入するように促しました。Yは少し躊躇しましたが、N.Yと、Nさんの
名字と自分の名前を記入しました。

その時のコンシェルジュの女性の表情は忘れられません。

常識的に考えれば、私とYが夫婦で、Nさんをどちらかの父親だと
思うに違いありません。コンシェルジュの女性もそう思っていたので
しょう。ですが、さすがにプロ。すぐににこやかな微笑みを取り戻して
Nさん夫婦とは別室、私個人で宿泊する部屋の手配に取りかかりました。

午後の挙式に備え、私達はそれぞれの部屋に引き取りました。
私はひとりで部屋へ。YはNさんと同じ部屋へと。暢気に部屋を見聞する余裕など
その時の私にはありませんでした。私はNさんに指示されていた通りに礼服に着替え、
落ち着かない時間を苛々と過ごしました。

…やがてホテルの方が私の部屋に迎えにやってきました。

年配の女性従業員は、道々このホテルでは訳ありの挙式は珍しくないこと
を話しました。(どうやら不倫カップルなどが良く利用するようでした)
従業員は皆このようなイレギュラーな挙式に慣れているから気にすることは
ないと暗に言いたかったのでしょう。

ホテルで挙式をするといっても、所詮は真似事です。
ウエディングドレスの着付けを行い、それらしく飾ったスタジオで
撮影するものとばかり思っていました。

しかし、従業員はホテルを出て、敷地の側に広がる小さな森の小道を進みました。
心地良い森の空気の中、苔むした煉瓦の小道の先に目的の建物が姿を見せました。
そこにあったのは、煉瓦造りのこぢんまりとした本物の教会だったのです。

教会の中も、挙式の準備がぬかりなくされていました。
最奥部の十字架の下、教壇の左右には色鮮やかな花が飾られていました。
入り口から教壇へと真っ直ぐに続く花道にも、白いカーペットが敷かれ、
その左右はリボンが飾られています。

…無論、教壇の前で俯くYの花嫁姿にも手抜きはありませんでした。

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Re: こんにちは

み-さん

私達は迷いつつ、時には立ち止まり、考え、話し合い、
今の形に落ち着きました。
その時その時の最善を選択してきたつもりですが、それでも時折
別の道もあったのではないか?と迷いが頭をよぎることもあります。

現時点では見えなくとも、時を経て始めて見えてくる物もあると思います。

またおいでください。

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