私はひとつ大きく息を吸いました。
そして、「…ボクも想像していたことがある」
と打ち明けました。
私は元彼女が寝取られた場面を想像したことを打ち明け、
そして寝取った男を知人ではなく弟に変換したことを話しました。
弟に元彼女を寝取られる想像をしたことで、異様な興奮をした
ことまで、包み隠さずYに打ち明けたのです。
Yは黙って聞いていました。
ややあって「弟さんって、あの方ですよね?」と言いました。
あえて言葉にしなくても、Yには一番下の弟の顔が思い浮かんで
いたのでしょう。私は小さく頷きました。それを見たYは少し顔を
曇らせました。
私には弟が2人います。
真ん中の弟はやや調子が良い部分はあっても人付き合いも
程々に上手にこなせる次男の特徴そのままなタイプ。
そして一番下の弟こそ私がコンプレックスを感じている
”華”を持って生まれたタイプです。
弟達とはYも何度も会っています。-正直にお話ししてしまえば、
Yは一番下の弟に良い感情を持っていません。
特にYが弟に対する印象を悪くしたのは、二度目に会った時、
創作料理を出す洋風居酒屋で私の両親と一番下の弟と会った時の
ことでした。少し酔っていたのもあってか、弟は店員の女性をなれなれ
しい口調でからかい気味に口説いていたのです。無論皆には見えない
廊下での出来事でしたが、それをYは目撃していました。
それ以来、Yは弟に対して”軽薄な男”という先入観を持ってしまい、
出来れば会うことを避けたい人間だと感じるようになっていたのです。