チャットの当日、私も、Yも異常に緊張していました。
私が書斎として使っている部屋の中で、
2人でいても落ちつかず、どちらもソワソワと立ったり
座ったりを繰り返していました。
Nさんとは幾度もメールでやりとりをしています。
性癖についても深い部分までお話をしている間柄です。
しかし、それ以外の部分はほとんどを知らぬ関係。
まったく見知らぬ他人という訳でもなく、かといっても
近しいとも言えぬ微妙な距離感の男性なのです。
今までは互いの素の部分に触れていなかったからこそ、
性に関する深い部分まで赤裸々に話しが出来たという部分が
確かにあるのです。
その微妙な距離感が、今日のチャットによって
明らかに一歩前進する。未知への不安と、同時に
メールでしか知らなかったNさんという人間が実際には
どのような人なのか。大きく二つの不安が私達には
あったのです。
…そして、約束の時間がやってきました。
私とYが眺めているPCの画面の中に「こんにちは」と、
至極当たり前の挨拶が現れました。
この何の変哲もない挨拶が、Nさんの第一声でした。
そして、「緊張して昨夜は良く眠れませんでした」と、
笑わせてくれたのです。
文字でのやりとりに不慣れな私達を気遣ってでしょう。
終始Nさんがリードしてくれたのです。