私達をご馳走が待っていました。
といっても、華美な料理ではありません。
Nさんが手ずから育てた家庭菜園の農作物や、採取して
保存していた山菜類。近くを流れる川で釣ってきた新鮮な川魚など。
それらの食材を炊き込みご飯や味噌田楽。焼き魚、鍋物など、
田舎風に素朴な味付けをしたものばかりです。
それらの料理はNさんが焼いた無骨な陶器の大皿に山と盛られ、
ドンとばかりに炉端に置かれています。
その食欲をそそることと言ったら・・・。
Nさんがこの日を非常に楽しみにしていて
くれたことが一目で伝わって来る、決して華美ではないけれど、
真心こもったもてなしのご馳走でした。
私達は恐縮しながら、ご馳走をいただきました。
どれも滋味溢れる優しい味わいの物ばかりで、この土地でなければ
味わえない貴重な料理でした。
私とYがご馳走を味わっている姿を眺めながら、
Nさんはニコニコと微笑んでいます。その姿はまるで祖父が
帰省した孫達を見ている、そんな姿を想像させました。
気持ちが豊かになるような滋味溢れる食事を終えると、頃合いを
見計らったようにNさんが腹ごなしに散歩に行こう、と誘って来ました。
私達は黒犬のリキを連れて、里山の散歩に出かけました。