柔らかなモノの正体は、Yの唇でした。
興奮がYの理性の臨界点を突破していたのでしょう。
彼女は突然立ち上がると、私にむしゃぶりついて来たのです。
その姿はまるで飢えて理性を失った獣のようでした。
彼女は本能のままに私に抱きつくと、盛んに首筋にキスを
繰り返してきたのです。彼女は譫言のように「好き、好き」
と繰り返しながらキスを繰り返すと、まるで発情したサルの
ように私の太ももに濡れた女性器を擦りつけて来ました。
私は何が起こったのか解らず、呆然としていました。
その時は理性が追いつかず、Yのなすがままに、太ももを濡らす
女性器の生暖かく粘着質な感触をただ感じているだけでした。
旧家の娘として厳しく育てられ、人並み以上のモラルや
倫理観で縛られているY。そのYが、今までみたこともないような
表情を見せているのですから。そのあまりの変貌ぶりに、私の理性が
理解することを拒んでいたようでもありました。
しかし、狂乱の時は呆気なく終わりました。
突然Yが「あ」と小さな声を上げました。
その声が上がると同時に、夢を見ているようにぼんやりとしていた
視点がはっきりと合い、Yの目に意思が戻ってきたのです。
我に返った途端、自分がやったこと、全ての状況を悟った
のでしょう。「すみません」というと、Yは慌てて私から身を引き剥がすと、
そのまま薄い羽毛布団を頭の上まで被ってしまったのです。
私は「大丈夫?」と声をかけましたが、
Yは布団の中から「大丈夫です」「少し休ませてください」
と応えるだけで、その夜は無言の時が過ぎていったのです。