唐突なNさんの言葉に、私達は戸惑いました。
なぜ、このタイミングで会う話をされたのか、解らなかったのです。
(正直に言えば、いずれは会うことになるにしても、この時点でNさんに
会うことを現実として受け止めてはいない部分があったのです)
正直にその疑問をNさんに伝えました。
Nさんから返ってきた返答は、言葉自体はいつものように柔らかでした。
しかし内容は極めて厳しい物でした。
Nさんの言葉を要約するなら、
「貴方たちは現実に踏み出す気があるのか?」
という問いかけでした。
というのも、私とYは相互オナニーを通じて、自分達の持つ歪みや
性癖について迫って来ました。
しかし、それは主に私とYだけの間で行われている物で、
そこにNさんの存在はなかった。-いえ、メンターとして、もっと言うならば
年長の後見人のような存在として、Nさんも当事者という意識が希薄
だったのです。
Nさんは、私とYは”閉じた輪”のような関係に満足し、
そこから出ようとしない内向き菜態度に疑問を呈したのです。
そして、その”輪”を脱却するつもりがないのならば、
自分としてはこれ以上関係を続けるつもりはない、という意味の
最後通牒でもあったのです。
そう、私達は心のどこかでNさんを祖父のような存在だと
感じていた。その甘えを指摘されたのです。
その指摘に対して、私達は何も応えることが出来ませんでした。