私とYが山梨のNさんの元を訪れた日。
その日は朝から気持ち良く晴れた冬の小春日和とでも
言うような気持ちの良い日でした。
この日、私達は中型のレンタカーで山梨を訪れました。
Nさんの住む古民家は集落から離れたところにあると聞いていました。
もし、何かあったときの用心を考えてこのレンタカーでの移動を選んだのです。
高速道路を移動中の車中は、ほぼ無言でした。
ハンドルを握っている私が長距離の運転に慣れておらず、
ずっと緊張していたということもあります。Yの緊張を和らげるために
何か言葉をかけるべきだと分かっていても、私自身余裕がなく、
それが出来なかったのです。それにも増して、このような関係性の人と会う
。しかも相手のテリトリーで会うということがより一層緊張感を増していたのです。
途中で幾度かSAで小休憩を取りました。
都内を離れ、郊外へと向かうにつれて徐々に緑が多くなって行きます。
それに連れて、見慣れぬナンバープレートが増えてきます。やがて山梨ナンバー
が増えてくるに従い、今、自分達がNさんの元へ向かっているということが
実感として感じ取れるのです。
そして最後の休憩の時のことです。やや長めのトイレから車へと戻ってきた
Yが、私に暖かい缶コーヒーを手渡してくれました。私が受け取ると、そのまま
手を握り、じっと私の目を見ました。その目は、まるで子供が親に縋るような
、そんな真剣な眼差しに感じられました。
そしてYは言ったのです。
「信じてますから」と、小さく呟くような声で。
私は手を握りながら小さく頷きました。