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目14

翌朝、私達はにこやかなNさんに見送られながら、
古民家を後にしました。

高速を走りながら、私はぼんやりと古民家であった出来事を
思い返していました。特に印象的だった”共有妻”について何度も
思い返そうとしました。しかしどれほど思い返してみたところで、
思考は千々に乱れまとまろうとしません。昨夜のことなのに、現実味の
ない映画を眺めているような感覚しかなかったのです。

Yも色々と思う事があったのでしょう。
ぼんやりと流れゆく車窓の外に目を向けながら、
遠い目付きで物思いに耽っているようでした。

比較的大きなサービスエリアで私達は幾度目かの休憩を取りました。

近くを大きな川が流れていました。
サービスエリアの脇に川へと続く道があり、休憩がてら川へと降りていく
人が目立ちました。私とYも自然に人の後を着いていき、川へと
降りていきました。

美しい川でした。
透き通った青い水を通して、川底の砂がはっきりと見えるほどでした。
胴長靴を着た釣り人が幾人か川に入っており、長い竿を緩やかに振りながら、
魚を釣っている姿が見受けられます。

私とYは、大きな石に腰掛けて、川面をぼんやりと眺めていました。

やがて、Yがぽつりと言ったのです。
「目の話、覚えていますか?」と。

私は小さく頷きました。
出発前、Yは、私とNさんが良く似ている。特に目が。
Yはそう話していたのでした。しかし、どうして、どのように目が似ているのか。
そこまではYの中でも言語化出来ていなかったのです。

Yはなおも続けました。
「あれ、解りました」

そしてYは話したのです。
私が絵画展で裸婦の画を見ていた時の目。そして”共有妻”の写真を
見ていた時の”目”それは異様な精気に満ちており、まるで写真の中の女性を
引きずり出し、今にも犯そうとしているように見えた、と。

私は反射的に反駁しようとしました。そのように乱暴な人物だとYに
見られたくなかったのです。しかしYはなおも言葉を続けたのです。

写真の中で女性と交わっていたNさんも、
まったく同じ”目”をしていた、と。

Yはそこで言葉を止めると、真っ直ぐに私を見ました。
そして、「きっとそれは”サディストの目”だと思います」と指摘したのです。

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Re: ネトラレ想像

ともさん

楽しみにお待ちいただきありがとうございます。
今回の更新はお休みさせていただきます。

またおいでください

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