山梨から帰ってから、早くも一週間が過ぎようとしていました。
私は自室でぼんやりとパソコンの画面を眺めていました。
カーソルが規則正しく点滅する様をなんとなしに眺めながら、
物思いに耽っていたのです。
”サディストの目”
Yから指摘されたその言葉が、私の中でカーソルと同じように
浮かんでは消え、消えては浮かんでいました。
確かに私の中に暴力的な衝動とでも言うべき得体の知れぬ何か、
ドロドロとした黒い奔流とでもいうべき感情が潜んでいることは確かです。
しかしそれはYと出会ったことで消え去ったはず。
…いえ、消え去っていないにしても、Yを前にすると衝動が湧き上がることは
皆無-自分を制すことが出来ていると、安堵していたのです。
にも関わらず、今回のYの指摘は、未だに私の中に潜んでいる衝動を
制しきれていない。自分を抑え切れていないという指摘と同様でした。
さらに輪を掛けて私を落ち込ませていたのは、
それに続くYの言葉でした。
「私に…その目を向けてくれないんですか?」
と、彼女は切なそうに言ったのです。
しかし…出来ませんでした。
確かに、相互オナニーをしているとき、想像の中でYを辱めることを
考えることはあります。それに興奮もします。ですが、それはどこかで自分を
セーブして、完全に心を衝動に委ねきってはいないのです。
もし、友人を辱めたときのようにドロドロとした衝動に身を任せてしまったら、
私はYに何をしてしまうのか。それが怖く、自分の中に無意識のストッパーのような
モノが働いているようでした。
私はYに率直にそう伝えました。
Yは小さく頷きました。
私にはYの心の声が聞こえてくるようでした。
Nさんなど交えず、あなただけに責めて欲しいのに、と。
グルグルと考えと、言葉、様々な情景が浮かんできます。
しかし幾ら考えても答えは出ませんでした。
まして、それに加えて”共有妻”ということまで考えなければならず、
考えているといつも頭の中がフリーズしてしまったのです。
そんな時でした。
Nさんから電話があったのは。