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Yの眼差し4

人生の伴侶はY以外に考えられませんでした。

お付き合いしてから一年後。私はYにプロポーズしました。
今まで付き合ってくれたことへの感謝と、これからは人生の伴侶として
歩んで欲しいと、素直な気持ちを伝えたのです。

Yは驚いたようでしたが、「私も、あなた以外に人生の
伴侶は考えられません」と言ってくれました。

しかし、「お返事は少し待ってください」と、浮かぬ顔で返事は保留されました。
一ヶ月が経過しました。返事をもらえぬまま、月日だけが経過していきました。
プロポーズのことに触れそうになると、Yは曖昧に言葉を濁し、それ以上触れる
ことを避けるような態度をとったのです。

私に何か問題があるんじゃないか?
Yのご両親に受け入れられなかったのか?
もしかして、Yには他の男性が…。
私は不安に押し潰されそうになりながらも、Yのことを信じて
待ち続けました。

しかし問題は私ではなく、Y自身にあったのです。

三ヶ月後、Yはようやく重い口を開きました。
Yは初潮を迎えるのが非常に遅く、二十歳を超えてからようやく初潮を
迎えたそうです。あまりに初潮が遅いことを心配したYのご両親は、大学病院
の産婦人科でYの精密検査を行いました。その結果、卵子を司る機能が非常
に弱く、自然妊娠はほぼ望めないことが解ったのです。

人工妊娠は可能なようですが、非常に可能性が低く、
費用や時間、精神的、肉体的な負担も大きく、おいそれと
行うことも難しいのだそうです。

Yは、妊娠出来ない事実を突きつけられたことで、
不完全な女という負い目をおっていた故に、プロポーズを
受け入れられなかったのだと打ち明けてくれました。

不妊の事実を聞かされても動じず、Yを受け入れられれば
良かったのですが、私はそれほど大きな人間ではありませんでした。
打ち明けてくれたことに感謝を述べ、少し考えさせて欲しいと
時間をもらったのです。

私は両親に相談しました。
誰よりも孫の顔を見たがっていたのは両親でした。

両親は、「お前達は大人なのだから、
お互いの気持ちで決めれば良い。私達のことは
気にしなくて良いんだよ」と言ってくれました。

そして、誰よりも辛いのはYであることと、
辛い事を打ち明けてくれた意味を考えるように
忠告されました。

私の心は決まっていました。
両親を前にしても、気持ちに揺らぎがないか、
それを私自身が確かめたかったのです。

Yと結婚するつもりであることを改めて告げると、
家族を持つことで得られる成長や喜び、安らぎを感じる
ことが出来ないのは残念だけど、お前が選んだのなら、それで
良いんだよ、と、母親がやや淋しそうに言ってくれたのを今でも
思い出します。

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