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Yの眼差し5

私達はプロポーズから一年後に結婚しました。
なぜこれほど時間がかかったのかというと、Yの姉の存在が
あったからです。

Yのご両親は暖かく私を迎え入れてくれました。
結婚に関しても、Yの身体的な問題を承知の上ということ
であれば、願ってもないと言ってくれました。

ただし、結婚はしばらく待って欲しいと言われたのです。
それというのも、Yの二歳上の姉はまだ結婚をしておらず、
妹の方が先に結婚するのは世間体が悪いとのことでした。

Yの姉の第一印象は、月並みな表現ですがクールビューティー
でした。女優の常盤貴子をさらに冷たくしたような美貌の持ち主で、
それだけでなく難関資格所持の才女という、非の打ち所のない女性
でした。初めてYの姉の部屋を訪れた時、まるでモデルルームの
ような生活感のない空間に、Yの姉の理路整然とした性格を見せ
つけらられているような居心地の悪さを感じたほどです。

Yの実家は、完全にYの姉を中心に物事が動いていました。
何をやるにもYの姉が中心でした。ご両親もYの姉に一目も二目も
おいており、重要な決定事項には、必ずYの姉の意見が重用されて
いました。

実家だけに限りません。
どのような環境でも一際目立ち、自然に一目置かれる
人間は存在します。そう、常に話題の中心にいる麗人、それが
Yの姉でした。

Y自身、どこに出しても非の打ち所のない素晴らしい女性ですが、
遙かに出来の良い姉の影に隠れ、常に二番手扱い。周囲の人々からは
いつも○○ちゃんの妹、と、姉の付属品のように呼ばれ続けてきたそうです。

YはYなりに、○○ちゃんの妹に相応しい人間になろうと
努力を続けてきました。その努力は実を結び、対外的には誰もが羨む
ような経歴を持つ素晴らしい女性となったのは事実です。

しかし、Yがどれだけ頑張ろうと、常に姉は一歩先を歩いていました。
Yの引っ込み思案や、人を避けるような性格は、華やかな姉の影に隠れ、
常に姉の付属品として扱われ続けてきた卑屈な生育環境に原因がある
ことをうっすらと感じ取ることが出来ました。

さらに、Yの不妊-女として不完全である事実が発覚したことで、
Yは決定的に自信を失いました。

生育環境による歪みと身体的欠陥。
それらがあいまった時、Yがとったのは、女になることを拒むことで、
欠陥から目を逸らすという逃避行動でした。

誰もYの弱さを責めることはできません。
しかし、その逃避行動はYにとって-いえ、私とYにとっての
重い枷となっていったのです。

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