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Yが共有妻になった日9

地獄のような時間が始まりました。
私のいる部屋から数メートル先、廊下を隔てたスイートルームでは
YとNさんが初夜を迎えているはずです。

幾度も時計を見ました。しかし時計の針は遅々として進みません。
まるでぬかるんだ水の中でもがいているようでした。

何度もNさんの部屋に乗り込もうと腰を上げました。
幾度もNさんの部屋のドアの前まで行きました。指をチャイムのボタンに
載せました。しかし、「女になる」ことを選んでくれたYの覚悟を思うと、私には
それ以上何も出来ません。

廊下で耳を澄ませ、Nさんの部屋の音を聞きとろうとしている自分が
酷く卑しいことをしているような、そんな罪悪感に苛まれました。

結局私は自分の部屋のソファーに身を沈める他ありませんでした。

様々な考えが頭をよぎりました。
私達は決断を間違ったんじゃないか。Yは女にならずとも、
ごく普通の夫婦として過ごすことこそ正解だったんじゃないか。
そんな考えが幾度も頭をよぎって離れません。

しかしこの時の私に出来たことと言えば、Yが自らの意思で初夜を
中止し、この部屋に逃げ込んでくることを祈るのみでした。

…しかし、祈りが届くことはありませんでした。

翌朝7時過ぎ、YからLINEが届きました。
そこには素っ気なく、「部屋に来て下さい」と要件のみが記されていました。

矢も楯もたまらず、部屋を訪れてみると…。
私は信じられない物を見ることになるのです。

部屋に迎え入れてくれたのはNさんでした。
Nさんはやや疲れているような顔つきでしたが、全身から精気が溢れて
いるようでした。白いバスローブ姿のNさんは私を部屋に招き入れると、壁際のソファー、
Nさんと同じ白いバスローブを羽織ったYの隣に自然に腰掛けました。

Yは、たった一晩で明らかに変わっていました。
艶々とした肌つやや、髪の艶が増しているのは無論のこと。
今までの精神的なアンバランスさ故の幼さは失せ、変わりに落ち
着いた女の色香を身に帯びていたのです。

私には2人の関係が変わったことが一目で解りました。
今までの2人は、主従関係や体の交わりはあっても、歳の離れた
上司と部下のような、尊敬や敬愛の情で結ばれた関係でした。
言うなれば2人の間には越えられぬ壁があったのです。

今の2人は情を交わした男女そのものでした。
2人の間に確かにあった壁は取り払われ、馴れ合った男女
特有の空気-視線を合わせておらずとも、互いの存在を肌で
感じているような親密な空気が2人から醸し出されていたのです。

私は一刻も早く、Yに触れたいと思いました。
何があったのか、2人きりになってYの口から聞きたいと思いました。
しかし、Nさんはやんわらりとした口調で、はやる私を窘めました。

そして…。
私は、NさんとYの初夜を見せられました。

コメント

早く

二人がどのように初夜を過ごしたのか早く知りたいし、またそれを知るのが怖い気もします。

素晴らしいです。
毎日更新を楽しみにしてます。

Re: 早く

> 二人がどのように初夜を過ごしたのか早く知りたいし、またそれを知るのが怖い気もします。

まさにあの時の私の感情と同じです。
知りたい。でも知りたくない。
相反する心に苛まれていました。

Re: タイトルなし

> 素晴らしいです。
> 毎日更新を楽しみにしてます。

ごらんいただきありがとうございます。
3-4月はバタバタしていて中々更新出来ませんが、
気長にお付き合いください。

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Re: こんばんは

み-さん

ご心配ありがとうございます。
深く感情移入していただけるのはとても嬉しいです。

もどかしい思いをさせてしまって申し訳ありません。
まだしばらくは情交のシーンが続きます。
Nさんに触れるのはその後になります。

気長にお付き合いいただけると幸いです。

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Re: こんばんは

み-さん

お心遣い、ありがとうございます。

Nさんには感謝しています。
Nさんの力があって初めて、Yと私の壁が越えられたのは
紛うことない事実です。そしてそれは私達夫婦のためであったと
信じています。

迷いつつ、悩みつつ、時には立ち止まりつつも、少しずつ進んでいきます。

こちらこそ、これからもよろしくお願いします。

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