私の驚きが余程大きく見えたのでしょう。
Yは慌てて、「あ、でも、勘違いしないでくださいね。
Nさんとお話ししてみたいといっても…性的な関係どうこうじゃなくて、
単純に寝取られを求める男性の気持ちを知りたいだけですから」
と付け加えました。
そして、Nさんと話してみたいと思った経緯を聞かせてくれました。
私が寝取られ性癖を告白して以来、Yは私とNさん、他の人達との
やりとりのメールを幾度も見返していました。それだけでなく、
寝取られ掲示板の私の書き込みや、他の男性の書き込みを見て、
寝取られを求める男性側の気持ち-私の気持ちを掴もうとして
いたのです。
しかし、当人である私ですら、その時はうまく言葉に出来ぬ
感覚でした。ましてやYにとっては輪郭を掴むことすら難しい状態
にあったのです。
五里霧中の中、カウンセリングが進められていきました。
その中で気付かされたのです。Nさんの指摘がどれほど適切で、
深いモノだったのかを。
カウンセラーは「認知行動療法」を行うつもりでした。
私とYに潜む歪みを一つ一つ洗い出し、歪みの原因となった
出来事に対する認知を変えることで、歪みを解消しようとしていた
のです。
例えば、私の中の歪み-兄という立場による抑圧やプレッシャーに対し、
引け目を感じる部分に目を向けるのでなく、兄であって良かったことや、
学んだことなどに目を向け、マイナス面ではなく、プラス面に着目すること
で、負の記憶を正の記憶へと転換する。というような療法でした。
そのような方向性でカウンセリングを受け、一つ一つ過去の記憶を
手繰っている内、私達は否応なしに気づかされることがありました。
「Nさんの指摘」「Nさんの帰還」という一連のエントリーで触れた、Nさんが
私とYに対して見立てた歪みの傾向。その見立てがどれほど正確で揺るぎの
ないものなのか。
Yは、Nさんの深い洞察力に敬服の念を抱いていたのです。
そして、Nさんであれば、寝取られを求める側の男性の気持ちを
-言うなれば私でも解らない私の気持ちを正確に掴める手がかりを得られる
かもしれない。そのような淡い期待を抱いたのでした。
「だから、一度お話しさせてもらえませんか?」とYは続けました。
無論私の方に依存はありませんでした。
Yの関心がNさんに向けられた。
それがどのような方向性のものであれ、私達にとって小さな一歩であり、
大きな前進でもあったのです。