Nさんとのやりとりを始める前、幾度も話し合った末に、
私とYは三つの約束をしました。
「隠し事はしない」
「気持ちは素直に伝える」
そして何よりも、
「お互いの気持ちを大切にする」
それは未知の世界への畏れを抱くYの不安を和らげるための
約束であり、同時に自分1人で物事を抱え込みがちな私自身への戒め
でもありました。
最初は、メールのやりとりを通じて、
互いの人柄を把握することから始められました。
まずNさんは、Yがメールのやりとりをする気持ちになったことを
大いに喜びました。その上で、今までYを抜きにして性癖などを語って
いたことに対して詫びました。そして、雑談のつもりで気楽に話して欲しいと
前置きをしたのです。そのことで、少しYの緊張も和らいだようでした。
そして、Nさんは自身の身の上を明かしてくれました。
それによると、Nさんは還暦を過ぎた男性で、公立の中学校で
校長職を勤め上げた後、山梨の別荘地の古民家に移り住み、
自給自足の生活を始めたとのことでした。
随分前に奥様を亡くしており、現在は一人暮らしであることや、
敷地内に小さな焼き窯を持っており、陶芸の趣味を楽しんでいること。
若い頃から芸術に趣味があり、時折は東京で行われている展覧会に
足を運ぶことを楽しみにしていることなどを、ざっくばらんに打ち明けて
くれたのです。
Yも美術鑑賞を趣味にしていることもあって、Nさんから送られて来た
自作の陶器類の写真を見ながら、嬉しそうに「良いなあ、私もいつか
陶芸をしてみたいと思っていたんです」と目を輝かせていました。
私とYの身の上についても、語れる範囲でNさんにはお伝えしました。
無論、やりとりは趣味の話しに留まりませんでした。
Yのもっとも知りたいと思っていたこと、
「寝取られを求める男性の気持ち」についても、
Nさんなりの語り口で語ってくれたのです。
そのとば口を切ったのはYの「あの、寝取られを求める
男性って、どんな気持ちだと思われますか?」という疑問から
始まりました。