しかし、この時はこれまでの相互オナニーとは少し感覚が
違いました。どこが違うのか、というのも難しいのですが、
お互いから妙な緊張感が感じられたのです。
すぐに緊張感の正体は分かりました。
緊張感の正体は、”畏れ”でした。
その畏れの根にあるのは、初めてYの方から持ち出された
テーマで相互オナニーするということと、もうひとつは、「寝取られ」
性癖の根にあるモノを探ることで、互いの性の歪み、言い換えれば
”素”の自分に触れられる畏れ-自分でも知らない自分と、そして
Yの触れたくない部分に触れてしまうかもしれないという畏れでした。
私達はしばらく黙って向き合ったままでいました。
Yはじっと蹲ったままで微かに身じろぎするばかりで、
ひと言も発しません。私も無言でした。
少女のような華奢なYの中に秘められた歪み。
そこに秘められている生々しい感情に触れること。
そして私の中に潜む生々しい感情-今まで誰にも見せたことのない
感情に触れられること。畏れと羞恥の入り交じった、今にも逃げ出した
くなるような気持ちに襲われていました。
出来ればお互いの生々しい感情には触れずに、
このまま仲の良い夫婦として過ごした方が幸せではないのか?
といういつもの弱気が私の中で悪魔の囁きを漏らしていたのです。