そして、話は想像もしていなかった方向へと
広がっていくのです。
食事を終えた私達は、Nさんの誘いでホテルの庭園を
散歩することにしました。
その庭園は、都内でも名高い庭園でした。
良く手入れのされた石畳をゆったりと私達は歩きます。
Nさんはこの庭園に詳しいようで、その由来から
今、どのように保存されているかなどを面白おかしく
語って聞かせてくれます。
私達は興味深くNさんの解説を聞きながら、
ユニークな話し方に笑いが絶えませんでした。
やがて、小さなチャペルが見えてきました。
私達はそこで一旦休憩することにしました。
Sさんは、自分の足が遅いせいで済みません、と
思いもがけぬお詫びをされたのです。
そして、Sさんから、現在妊娠五ヶ月であること
を知らされたのです。
改めて考えてみれば、Nさんが必要以上にSさんを気遣う姿や、
ゆったりと足下を気にしながら歩く様など、妊婦だからと言われれば
そうとしか見えません。さらに、ゆったりとした上品なワンピースの
お腹の辺りが、ふっくらとしているように見えます。
私とYの視線に気付いたSさんは、愛おしそうにお腹に触れました。
その仕草を眺めるNさんも愛おしそうな目をしています。
そこで、ふと私の中に下世話な疑問が浮かびました。
…誰の子なのか、と。
しかし、あまりにも下劣な疑問です。
それを口に出すことは自分の下劣さをひけらかす
ようで憚られました。